在宅生活をイメージした復帰支援の在り方

老健に入所中のADLを見た場合、自宅と同じようなスタイルで実行できる環境は非常に少ないものです。たとえば、食事のイスやテーブル、食器類は自宅のものと異なるため、自宅でどのような家具や日用品を使用していたのか聴収する必要があります。全く同じものにするのは難しくても似たような設定にすることで動作面での困難さも評価が行えます。

また、食べこぼしという現象を見た場合、すぐにエプロンをつけてしまう施設があります。しかし、その原因を評価することなく、家族にエプロンを持ってきてもらうことは、作業療法とは言えません。評価すべき視点としては、テーブルやイス等は利用者の能力に適していて姿勢の保持ができているのか、視覚的に捉えられているのか、食べ物だという認識があるのかなど多岐にわたります。作業療法士はそういった食事動作場面での評価を適切に行い、他職種に食事の時の注意点を伝えたり、実際に一緒に食事をとってみることが重要です。

そもそも、エプロンをつけた状態での食事が自宅の食事というのは考えにくく、障害や高齢、あるいは認知症であるからといってエプロンをつける発想が当たり前になってはいけないのです。このような場合は、作業療法士である以上は食べこぼさない方法を他職種に伝えることが必要になってくるでしょう。在宅生活では食事や排せつなどを毎日繰り返されるADLがいかに自立しているかが家族の生活を左右します。老健は治療が落ち着いた後の生活を基本にしている以上、基本動作から応用動作、適応動作等の一連のプログラムを実施していく必要があるのです。